音楽 インタビュー 2025年10月25日
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【インタビュー】今最も勢いのあるフィメールラッパー・MaRIが語る、New EP「Trophy Bitch」に込めたリアルと変化
Trophy Bitch MaRI ラッパー HIPHOP

2025年10月15日、MaRIの待望の新EP『Trophy Bitch』がリリースされた。

今作は、彼女の“Bad Bitch”な一面を前面に押し出したパワフルなラップから、アフロビーツを取り入れた心地よいトラック、そしてメッセージ性の強いR&Bまで、多彩なサウンドが詰まった渾身の一枚だ。

横浜アリーナ公演を控え話題沸騰中のLANAや、実力派シンガーIllnanaも参加し、これまでのMaRIファンはもちろん、新たなリスナー層も惹きつけることだろう。

進化を続けるMaRIの魅力を存分に味わえる作品となっている。

今回は『Trophy Bitch』の発売に伴い、MaRIにインタビューを敢行。

彼女が語った、制作の裏側やこれからのビジョンとは。


ータイトルの「Trophy Bitch」にはどのような意味や想いが込められていますか?

この言葉は「Not your Mama」という曲のバースにも入っているのですが、男の人が自分のステータスを上げるために選ぶ女性という意味あります。


Not your Mama 歌詞

「死んでもなりたくないトロフィーワイフ ってかむしろ今すでにトロフィービッチ」


「Bitch」っていう言葉は日本だと悪い意味に捉えられがちですが、実際は「かっこいい女」「イケてる女」のような良い意味もあります。

喧嘩している状態で出る「Bitch」は悪口だと思いますが、それ以外の場合ではマイナスに捉えることはないですね。


ー今回ジャケット写真はすごく攻めたビジュアルになっていますが、こちらはどのような意味が込められていますか?

女性の見方になりつつ、男を虜に。男に支配されない強い女性という感じですかね。

自分ではそういうイメージでやっています。その写真見ただけで「強そう」みたいな。



ー作品を作る上でコンセプトのようなものは決めましたか?

プロデューサーのJAZEE MINORと最近起こったこととかをよく話すんですけど、その中で「このテーマいいね」ってなったことを元に曲作りをすることが多いです。

なのでいつも「こういう曲を作ろう」みたいに前もって決めるというよりかは、会話の中で良いと思ったことから決めているような感じがします。


ー狙って曲を作るというよりかは、ディスカッションしていく中でお互いにインスピレーションが湧いてくるということですね。

そうですね。私が客演に入るときはしっかりテーマに沿ってリリックを書くからこそ、自分の曲はプロデューサーとたくさん話して制作してるかもしれないですね。

トラック作りに関しても結構言います。JAZEEくんが好きなビートもあれば、MaRIが好きなビートもありますしね。それこそ「Not Your Mama」は*アフロビートだったので新しい挑戦の一つでした。


*アフロビート=ナイジェリアを起源とするファンクやジャズの影響を受けた音楽ジャンル。


このビートを聴いた時、フックにあのLANAちゃんの素敵な歌声を入れたいって思いました。

こういう曲はLANAちゃんとやってみたいっていう思いもありましたし、LANAちゃん自身もアフロビートは初めてだったみたいで2人とも新鮮な感じでした。

それにしてはすごく良い曲が作れたし、聞いたら踊っちゃうような曲に仕上がりましたね。



ー前作『PENTHOUSE』では、全体的に重厚感のあるトラックが印象的でしたが、今作ではこれまでとは異なる方向性の楽曲が多いように感じました。こうした新しいスタイルに挑戦するうえで、難しさや苦労を感じることはありましたか?

難しかったですけど、やってみて無理だったら出さないし、かっこよかったら出すっていうやり方で進めていました。なので色々な歌い方を試しましたね。

5曲目に入っている「Alright」っていう曲、私自身かなり気に入っているんですけど、今まで見せてこなかった一面を見せたいと思って、少ししんみりした感じで歌っています。

結果すごく良いものになったし、苦労したというよりかは新しい自分を見つけることができて楽しかったっていう印象が強いですかね。


ーこの楽曲はIllnanaさんが客演として参加されていますが、どのような経緯でコラボが実現したのでしょうか?

JAZEEくんが紹介してくれたんですけど、すごくいい歌声で。曲のタイトルが『Trophy Bitch』ということもあって、客演には女の子だけを入れたいと思っていたので、「nanaちゃんがいいな」ってなりました。吸い込まれるような、癒される歌声を持っていて、この曲に一番合うんじゃないかなって思ったんです。なのでこの曲、結構みんなグサッとくると思います(笑)。

声の相性もすごくよくて、私も「トライしてみてよかったな」って思いました。


ー本質的な部分で、シンガーとしての幅が広がった印象を受けました

嬉しい。自分は重低音の重い曲が好きだけど、これからはもっと色々なビートにトライしたいなと思います。自分の好きな感じをやりつつ、重低音が好みじゃない人も聞けるような曲も作りたいですね。


ー「MAGURO」は、これまでの方向性に近い楽曲だと感じましたが、どのような流れで制作されたのでしょうか?

今までのネクストレベルみたいな感じです。これまで出してきた強い感じというよりは、「かっこいい」みたいな。でも、面白いですよね(笑)「MaRI、何言っとんねん!」みたいな。

でも、ちゃんとバースを聴いたら「分かる」ってなる曲だと思います。

聴き心地もいいし、中毒性がある。寿司食べるたびにMaRIの顔、思い浮かぶみたいな(笑)


ー1曲目の「お察し」は以前にも発売された楽曲ですが、この曲はどのようなイメージで制作しましたか?

掛け声っぽいフックが欲しくて作った楽曲ですね。

歌詞の「短いその物差し」の物差しは一人の人間としての考え方や視野、男性の下半身の意味もあります。「お前の考えは狭い」「視野が狭い・自由がない」といったような想いが込められていますね。

「周りはフェイク友達」っていう歌詞は、私が上辺な人間が嫌いっていうところから来ています。

見栄を張るために有名人やお金持ちに近づくみたいなのは、本当にクソ喰らえって思っているので、それに対するメッセージを込めています。

「フェイク友達分からない時点でお察し」はそれを理解していない時点でもう大丈夫ですって感じだし、「心中お察しします」はちょっとふざけを入れたくて(笑)日本っぽいリリックだし、敬語ってちょっと舐めてるじゃないですか。それが結構マッチしていて、かっこいいフックができたなと思います。



ーリリックはどのような時に作ることが多いですか?

スタジオでJAZEEくんといつもアイデアを出し合って作っています。事前にこういう曲を作りたいって思う時もあります。結構バラバラですね(笑)


ー結構言葉がスラスラ出てくる感じですか?

出てくる時もあれば、出てこない時もあります。差が激しい。


ー出てこない時はどうすることが多いですか?

何もやらないです。子どもと触れ合って公園行ってチルして、いっぱい遊んだりクラブ行ったりします。

そこからリリックとかやりたい曲が出てきます。普通にビートとかをいっぱい聴いて、「こういうのもいいな」ってなる時もあるのでマジでバラバラですね。気分屋さん(笑)


ー今回の作品の中で、リリックを作るのが大変だった楽曲はありますか?

それこそ一番気に入っている「Alright」かもしれない。やっぱり慣れていないから、難しかったです。でも一番いいなって思ってます。新しい自分だから。


ー特に好きなバースはありますか?


「集合場所は近所のアピタ 今じゃAKと横浜アリーナ」

「響かせた世界中にDear mama もう大丈夫って言えるよ今なら」


ここですかね。近所のアピタって、家から10分くらいの小〜高校生の時に友達とかと溜まる場所だったんですよ。そこで音楽を聴いたり、行けば誰か居るみたいな。そんな風に金も何もかもなかった私が、今じゃAKさんと横浜アリーナに立って、しかもそこで「Dear Mama」っていう亡くなったお母さんに対する曲も歌えて。ママへのメッセージをみんなに伝えることができたし、もう私は大丈夫だよっていう意味を込めています。


2バース目も結構好きです。


「経験しなくてもいいようなこと 両手でも数えきれない」

「人生ゲームならば不利 でもあの日の痛みが武器」


不幸なこととか、辛いことがあったらそれが武器になるよっていう。自分でもこの部分を聞く時、いつも元気をもらいます。


ー「強い女性像」を描くことがひとつの大きなテーマになっていると思うんですが、実際には、強く生きることができない女性も多いと思います。そういった現実をどう捉えていますか?

そうなんですよね。音楽って、一人で聴くときもあれば、みんなで聴くときもあって、その時の気分や状況によって選ぶ曲って変わると思うんです。

やっぱり一人でいるときって、しんみりした曲を聴きたくなることがあると思うんですけど、「Alright」はまさにそういうときに響く曲だと思ってます。

この曲を聴いて、「負けない」とか「辛くても大丈夫」って思ってもらえたらうれしいし、「こんなMaRIでも頑張れてるんだから、自分も頑張ろう」って思ってもらえたらいいなって。



ーアーティストはステージに立つまでの苦労が多いと思いますが、その点に関してはいかがでしょうか?

マジで大変でした。客いないライブとかありましたからね(笑)

本当に大変だったし、それが短かった訳でもないけどそういう時期があってよかったと思います。

最初の方はクラブバンガーな曲しか出してなかったけど、今は視野を広げてお母さんのことや人に共感してもらえるような歌も歌えるようになったので、これからも続けていきたいです。


ー日常の中で、インスピレーションが湧くのはどのような瞬間が多いですか?

ママやっている時とか家のことをやっている時とかですね。あとは恋愛した時とか?

生活の全てが自分の表現につながっていますね。

あとは欲しいものを入れることが多いです。

手に入れたいものをリリックに入れると、マジで手に入ることが多いんですよ。

びっくりする。その力ってすごいなって思いますね。


ー今立ってみたいステージはありますか?

自分、客演は多いんですけど、持ち曲がまだ少ないので、ワンマンライブってあまりやったことがないんですよ。だから、Zeppとか武道館を借りて、ワンマンをやるのがまずひとつの目標です。

でも、最終的には世界に行きたいですね。

ただ、一気にドーンと行くのは違うと思ってて。ちゃんと一個一個、ステップ踏んで進んでいきたいです。


ーそういった目標がある中で、今回のEPはどのような位置付けになるのでしょうか?

前のEPよりは確実にレベルアップしていて、いろんな方に聞いてもらえるEPになったのかなとは思います。それこそ「Dear Mama」を出したおかげで、こういうしんみりした曲に合わせて自分の心のうちを出せるようになったなと感じていますね。



ーこれまでは、“強い女性像”をしっかり打ち出さなきゃいけないという気持ちがあったかと思いますが、今は逆に、もっと赤裸々な部分を出せるようになってきた感覚もありますか?

ありますね。ずっと「泣いてることなんてなさそうな強い女性」みたいなイメージだったと思うんですよね。

だけどママが亡くなって数年でママの曲なんて作れるわけがないし、ママへの気持ちを一曲にまとめられるわけがないってずっと思ってたんです。

それをJAZEEくんにもずっと伝えてましたし、AKさんのお母さんもご病気なのでお互い楽屋で泣きながら語ったりしました。

そこから曲を作ったんですけど、AKさんとそういうしんみりした曲のレコーディングは初めてで。

でもMaRIもこういう曲が作れるということが分かって、結構楽になったというか。

一曲にまとめるっていうのをやめて、ちょこちょこ出していきたいなと思います。


ーそれらを踏まえて、今後どういうものを作っていきたいですか?

いろんなものに挑戦していきたいタイプなので、具体的にはわからないです。

でもこれから自分の人生に起きていくリアルなことを、きちんと届けていきたいですね。



<リリース情報>



Trophy Bitch / MaRI

リリース日:2025年10月15日

https://music.apple.com/mt/album/trophy-bitch-ep/1841697327


1.お察し

2.MAGURO

3.Safada

4.Not Your Mama(feat.LANA)

5.Alright(feat.Illnana)



<MaRI プロフィール>



ブラジルにルーツを持つ岐阜県出身のフィメールラッパー。

2021年にリリースした「BUM BUM」がクラブバンカーとしてヒットし、一気にスターダムへと駆け上がった。2023年4月には男が耳を塞ぎたくなるような過激なリリックを駆使し、まさにビッチアンセムになるであろう1st EP「PENTHOUSE」をリリース。

また、AK-69、Yellow Bucks、DJ RYOWなどシーンを代表するアーティストとの客演を果たす。さらに大ヒットした「Bad Bitch 美学」や「チーム友達(東海REMIX)」にも参加するなど、フィーチャリングクイーンとしての存在感も発揮している。2024年にはNEWシングル「不良外国人 feat. MIYACHI & AKLO」がスマッシュヒット。

8月より全国20を超える都市でのCLUB TOURを開催するなど、今最も話題と勢いのあるフィメールラッパー。


LIVEブッキング:株式会社BUZZFACTORY 大井 080-4430-3008 hijiri@buzz-factory.info

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BUZZチケ編集部注目ポイント

圧倒的な存在感とストレートなリリックで注目を集めるラッパー・MaRI。

最新EP『Trophy Bitch』では、自身のリアルな経験や内面の変化を赤裸々に表現している。

いま最も勢いのあるフィメールラッパーが語る、“変わりゆく自分”と“ブレない信念”とは。