音楽 2025年08月10日
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白風珈琲、新曲『朝顔 feat.雨歌エル, 可不』を1年8ヶ月ぶりにリリース ポエトリーな世界観に注目
ボーカロイド VOCALOID ボカロ 雨歌エル 可不 朝顔 feat.雨歌エル 白風珈琲

2025年8月6日、『朝顔 feat.雨歌エル, 可不』がリリースされた。使用ボーカロイド、UTAUは雨歌エル・可不で、楽曲制作者は白風珈琲(X:@shirakaze)氏。

Youtube、ニコニコ動画にアップロードされると同時に、各種サブスク配信が開始された形だ。今回の楽曲は1年8ヶ月ぶりのリリースとなり、白風珈琲氏もXにて「戻って来られて本当に良かった ただいま」と、嬉しさを報告している。



冒頭から、ギターサウンドと電子ドラムが流れる。軽快に、しかしどこか含みのある雰囲気に、一気に引き込まれる。


「塞いだ世界 風吹かないまま」という歌詞に顕著な、停滞感や閉塞感が「廻らない夜と錆びた月 風は吹かないし雨降らない 蝉は鳴かないし朝も来ないまま」といったような情景の比喩に乗せて繰り返し強調される。「思い出せない花の色

塗り重ねるたび遠のいてゆく」「記憶をたどる旅に出た」といった歌詞からは、過去の記憶や感覚がふいに思い出せなくなってしまった様子が想像される。無くしてしまった感情を探し続けているような、切実さのある語りだ。


最後には「風はいつからかそばにいて この部屋かき回して」「描きかけて立てかけた花の絵に 名前すら残せないまま 僕は錆び付いた船に乗って 風と共に朝へ向かう」と、過去の記憶や感覚の欠乏への執着を捨て、どこかさっぱりとした語り手の感情で曲は終わる。欠乏や過去を探し求める中で、自然と見ることができる未来や光はあるのだろうか。

1番の歌は雨歌エルが、2番は可不が担当する。声質の異なる2つの機械音声が交代で作り出すトーンの変化にも注目だ。

3DCGを用いたMVも、楽曲同様全て白風珈琲氏本人の制作によるものだ。朝顔が抽象化された表現や、モノクロの椅子やギター、「風を知らない」「記憶をたどるロケット」など、歌詞の織りなす世界観をさらに引き立てる。歌詞の並べられ方も、ところどころいびつにずれていたり、固有名詞の位置が強調されているような部分があり、白風珈琲氏特有のポエトリーさを際立たせていると言えよう。

閉塞感の中、いつしか感じられるようになっていた「風」の赴くままに再び動き出す。まさしく、1年8ヶ月という歳月を超え、技術や表現を磨き上げて作品制作に戻ってきた白風珈琲氏本人にも重ねられる。「思い出せないあの花」「描きかけて立てかけた花」はタイトルにある「朝顔」なのだろうか。夏らしい涼しさを感じさせるスタイリッシュに洗練された音楽や映像に、葛藤や心情の変化が見える一作だ。



各種サブスク配信

https://big-up.style/DlOah3b7Ww


白風珈琲公式ホームページ


白風珈琲公式X

https://x.com/shirakaze


文:米田麗美(X:https://x.com/qulqulxl)