【武蔵野美術大学 美術館•図書館】展覧会「別の⼭に登る──⾚塚祐⼆」の開催について
武蔵野美術⼤学 美術館・図書館で「別の⼭に登る──⾚塚祐⼆」が開催される。本展は、武蔵野美術大学造形学部油絵学科で長年教鞭を執ってきた⾚塚祐⼆氏の教授退任記念だ。⾃選回顧展の形式で、赤塚氏のこれまでの制作の軌跡を辿る。
1980年代後半から本格的に絵画制作に取り組みはじめた⾚塚氏。「もの派」以降の抽象絵画を牽引しながら絵画表現の可能性を探究し、現在に⾄るまで途切れることなく⼤作を発表し続けている。本展は1991年に油彩・蜜蝋で制作された《hana 119111》を⽪切りに、初期から現在に⾄る油彩作品35点に加えて版画、ドローイング、立体作品を並べる。⾚塚氏の制作の軌跡を辿るのは、本展が初の機会となる。
絵の具を何層にも塗り重ねた厚みのあるタブローを、ペインティングナイフ、筆、布などで削り、こすり、拭き取る。この作業を何度も繰り返すことで生み出された重厚で豊かな表情が特徴の〈hana〉〈canary〉シリーズ。また、赤塚氏が絵画表現を模索する過程で制作された、絵の具の量を減らした薄付きの画⾯とカラフルな⾊彩の対比で構成された〈another mountain〉〈suspense〉シリーズ。まさに「回顧展」に相応しい歴史の厚みが感じられる展覧会となっている。
概要
会期:2025年9月8日(月)–10月26日(日)
時間:11:00–19:00(土・日曜、祝日、10月24日(金)は10:00–17:00)
休館日:水曜日
入館料:無料
会場:武蔵野美術大学美術館 美術館 展示室3、アトリウム2
主催:武蔵野美術大学 美術館・図書館
協⼒:コバヤシ画廊、鎌倉画廊、武蔵野美術⼤学 油絵学科研究室
詳細:https://mauml.musabi.ac.jp/museum/events/22461/
見どころ
2006年から2013年にかけて発表された〈another mountain〉シリーズの第1作⽬となる《another mountain》は、重なり合う⼭のようなかたちが描かれる。これは、⾚塚氏の故郷である⿅児島県にある、高千穂峰・桜島を彷彿とさせる。赤塚氏は1990年代前半の〈hana〉シリーズと2000年代前半までの〈canary〉シリーズで、厚みを伴った巨⼤な画⾯に⼤量の絵の具を⽤いた。その時の絵の具をつけては削る作業の反復や模索、試⾏錯誤を繰り返す過程を「別の⼭に登る」ことに重ねあわせた。《another mountain》は、故郷も本人の葛藤も描き出された、赤塚氏自身の変容のきっかけとなった注目の作品だ。
「絵画を制作する過程を⼭登りに例えるならば、作品が完成した喜びとはすなわち⽬指す⼭頂に到達した喜びである。しかし、登ろうとした⼭とは違う別の⼭に登ってしまったとしたらどうだろう。絵を描いているとそういうことが、よく起こる」「いや、むしろそうあってほしいと、嘆いている顔の下で密かに思っているふしがある。それは私の意図した⾏為と現実の間にあるズレによって引き起こされる。絵を描こうとすると意に反して画⾯に現れてくるものは私の思惑からズレる。それをカバーしようとしてまた描くが、またもやズレてしまう」「それでは絵画はどこかにいってしまうではないかと思われるだろうが、完成するまでやめない覚悟で続けるだけだ」と赤塚氏は自身の制作観を語る。
「何かをイメージして具体的なかたちを描くのではない。⾃⾝を取り巻くすべての要素を取り出す作業として、偶発的に表出した「なんとなく何かに⾒える」かたちを⼀貫して表現する」。さまざまな可能性を秘めた創造への葛藤を、「別の⼭に登る」という⾔葉で表現する⾚塚氏。画家として、そして教授として、独⾃の境地を切り開いてきた数十年に渡る軌跡を、本展示では存分に堪能できる。
作家略歴
⾚塚 祐⼆(あかつか・ゆうじ)
1955年⿅児島県⽣まれ。1979年東京藝術⼤学卒業。1981年同⼤学院美術研究科(版画研究室)修了。1999年武蔵野美術⼤学造形学部油絵学科教授。
1981年Galerie 412を皮切りに、コバヤシ画廊、ギャラリー米津、ギャラリー池田美術、村山画廊、鎌倉画廊などで個展多数。
1992年「現代美術への視点 形象のはざまに」東京国⽴近代美術館、1995年「視ることのアレゴリー 1995:絵画・彫刻の現在展」セゾン美術館、2003年「絵画の⼒ 80年代以降の⽇本の絵画」東京都現代美術館、2012年「抽象と形態 何処までも顕れないもの」DIC川村記念美術館など、国内外で数多くの展覧会に参加。
関連イベント
対談①
日時:2025年9月11日(土) 16:30–18:00
会場:美術館ホール
出演:南雄介(元愛知県美術館館⻑)、⾚塚祐⼆
対談②
日時:2025年10月13日(月・祝) 16:40–18:00
会場:美術館ホール
出演:伊藤誠(武蔵野美術大学 造形学部彫刻学科教授)、⾚塚祐⼆
同時開催
「伊藤誠──夢を⾒るための機械」
BUZZチケ編集部 注目ポイント
武蔵野美術大学教授・赤塚祐⼆の退任を記念した初の自選回顧展が開催。
代表作〈hana〉〈canary〉〈another mountain〉などから、創作の軌跡を辿る。