イベントレポ 2025年05月19日
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【イベントレポート】Kimono Robeを通じて新しい”きもの”のあり方を世界に発信するブランド"ALISA"が1周年イベントを開催。日本文化を見つめる場に。
Kimono Robe 日本文化 着物 kimono 伝統工芸 和紙 ALISA
文・写真:misakihoshino


生産者と消費者がともに文化を紡ぐ場へ


2025年5月14日、代官山シアターギルドにて、 アパレルブランド「ALISA」の1周年を記念したイベント「ALISA 1st Anniversary Event」が開催された。

伝統工芸の職人や文化に関心を持つ参加者が集い、文化の継承と発展をテーマに交流が行われた。


会場では、ウェルカムドリンクやフィンガーフードが提供され、テーブルにはALISAの商品をはじめ、ふじや染工房やgftf和紙巻物作家・小栁津仁氏によるプロダクトが並び、来場者を迎えた。


イベントの幕開けを飾ったのは、華道家・杉山香林によるライブパフォーマンス。

ALISAの代表作である「Kimono Robe」の製造工程を映した映像が流れる中、水中に浮かぶ花々とキャンドルの灯りが空間を彩り、来場者をALISAの世界観へと引き込んだ。





「ALISA」に込めた想い

ALISAの主宰者・Alisaが登壇し、ブランド立ち上げの経緯や込めた想いを語った。

奥深い着物の世界に自身が魅せられたこと、金融業界で勤務していた当時、出張先のニューヨークで“Kimono”がローブやパジャマのようなファッションカテゴリーとして認識されている現実に触れ、違和感と同時にその市場の可能性を強く感じた経験や、また縮小している着物業界への危惧などが起業のきっかけとなったという。

着物や伝統工芸を「古いもの」としてではなく、現代の暮らしに根ざした“文化としての美”として発信したい。

その想いのもと、職人とともに、作り手・使い手・社会の三方にとって豊かな循環を生み出す「三方よし」のものづくりを目指していると語った。

来場者たちは、その言葉に耳を傾けながら、ALISAというブランドの核にある理念を受け取っていた。





伝統工芸の「継承と進化」を語るパネルディスカッション

続くパネルディスカッションでは、ふじや染工房三代目の中村隆敏氏と、gftf和紙巻物作家の小栁津仁氏が登壇し、「伝統工芸における継承と進化」をテーマにトークセッションが行われた。



中村氏は、祖父の代から続く染工房を継ぎ、「作り手であり、発信者でもある」という姿勢でプロダクトの開発や情報発信にも積極的に取り組んでいる。

次世代に伝統をつなぐためには、「職人自身が前に出て語ること」や「異業種との連携」が重要だと語った。


一方、小栁津氏は岐阜・飛騨市を拠点に、「伝統を活かして社会課題に向き合うこと」をテーマに活動。

和紙製のキッズメジャーなど、日常に寄り添うプロダクトを展開しており、「伝統を”上書き保存”するのではなく、まずは”別名保存”して共存させる」という視点から、新しい価値を生み出す試みの大切さを伝えた。



現場が抱える課題から、伝統という言葉の再定義、そして今の社会における役割まで、それぞれの立場からの実感と展望が率直に語られる、実りある時間となった。



来場者が語る「私の好きな日本文化」

後半には、「日本文化の好きなところやモノ」をテーマにした参加型セッションも行われた。

事前アンケートをもとに司会が来場者に声をかけながら進行され、「着物」「和菓子」「おもてなし」「カラオケ」「花見」「華道」など、幅広いトピックが飛び出した。

「帯のデザインに惹かれて着物を好きになった」「お弁当は、小さな箱に宇宙が詰まっているよう」など、個人の想いや体験が語られるたびに、会場からは共感や笑いの声が上がった。

文化とは、特別なものではなく日常の中にある、そんなことを改めて感じさせる、あたたかく和やかな時間が流れた。








“お茶”がつなぐ、新たな交流

さらに、会場ではnokNok代表・角野氏による「OCHA experience」も実施。

香りや温度で味わいが変化する煎茶や、焙煎茶葉の食体験などが用意され、ドリンクを通じた交流の場としてにぎわいを見せた。





イベントの最後には記念撮影が行われ、参加者それぞれがALISAの1周年を祝福しながら笑顔で締めくくられた。



文化は誰かが守るものではなく、関わる一人ひとりがつくっていくもの。

ALISAは、そんな時代の感覚に寄り添いながら、日本の美意識と技術を未来へつないでいく存在であり続けるだろう。









ALISA 1st Anniversary Event



ゲスト紹介


ふじや染工房三代目 中村隆敏(東京・新宿)

伝統に根ざしながらも、現代のファッションシーンとも積極的に連携し、手仕事の可能性を広げている着物の引染職人。


gftf和紙巻物作家 小栁津仁(岐阜・飛騨市)

和紙という伝統に新しい息を吹き込む若き作家。gftfとして「未来を宝ものにする、和紙のキッズメジャー。」の作家活動をはじめる。


nokNok株式会社 角野 賢一

(写真 左)


ALISA HP:https://alisarobe.com/ja